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【作品名】㉛語らい
菱田 波(NAMI HISHIDA)
東京都生まれ
1965-
【作品に関して】
石は、私たちの住む地球が誕生した頃から存在しています。多種多様な石の中から自分の好きな石と出会い作品のイメージを生み出します。石はそのもの自身がたくましい力を持ち力強く輝いています。その存在感を生かしたものを作りたいと考えます。私が少し手を加えることにより石に新しい息吹がふきこまれ力強い作品となっていくのです。
私の作品は石を割った面と、切った面とで成り立っています。石を割るときは、はじめにデッサンしたように計画通りには割れてはくれません。石自身が割れたい方向に割れるのです。そこから偶然できた形が最も美しくその石らしい自然の形になっています。切った面を磨くことにより割った面の美しさがよりきわだつようにしました。抽象的な形ですが、私は「語らい」という題をつけ、石と石とが少し空間を保ちながら4つの石が会話をしているように並べました。見に来てくれる方が、この作品の所で楽しく語り合うことができればうれしく思います
【制作】2002米子彫刻シンポジウム
【会期】2002年7月13日~8月25日
【米子彫刻シンポジウムに参加して】
私は中国地方に来るというのは初めてでした、鳥取県と島根県の位置関係もよくわからないまま、米子に来ました。以前、米子彫刻シンボジウムに参加した作家たちは、米子はとてもよい所で「女の子」でも大丈夫と聞いていましたのでいつか私もここで作品を作りたいと願っていました。
このシンボジウムに参加することができて本当によかったと思っています、とにかく40日間で作品を仕上げなければいけないという思いがあり、いつも頭は作品のことで一杯でした。本来、朝が弱い私ですが、早朝から会場に行き、海からの風を感じながらすがすがしい気持ちで制作にとり組む毎日でした。他の3人の作家たちは、私より年上で経験豊富な方たちなので、仕事の進め方や方法など、未熟な私にとっては新鮮な発見があり、多くの事を学びました。
普段は自分が女だということをあまり意識せずに制作をしていますが、開会式の時に森田市長が、「米子は、女性にやさしい土地だからね。」と言ってくださったので私はやはり「女の子」だったのだと思い、少しうれしく感じました。またボランティアの方が、肌の日焼けを気遣って化粧品を下さるなど、気持ちが和みました。アイスクリームやジュースが欲しいと言えばすぐに届く、という心遣いをしてくださるので、私は作品を作ることに集中できました。
知らない土地での制作は緊張やとまどいがありますが、それらのすべてを米子の人々と土地がときほぐしてくれました。落ちついた街並みも、どこか懐かしい感じでした。その上食事に関しては、魚が、こんなにおいしいものだったのかと感嘆しました。いろいろな方と話しているうちに、この地に良い作品を残したい、皆に愛される作品を作りたいという思いがしだいに深くなりました。環境がよかったせいか自分のイメージ通りのものができあがりうれしく思っています。決して私一人の力ではなくたくさんの方に支えられてこそ完成した作品だとしみじみ感じています。
私の作品は松の木の下に設置してありますが、公園へ来る人の散歩道なので多くの人がみてくださることになります。今後長年にわたって人々に親しまれる存在になってほしいものです。季節のうつり変わりと共に作品も多様な表情をみせるようになるでしょう。
米子に来て、人とのふれあいの大切さ、心のあたたかさに触れました。石との出会い、人との出会いに感謝し、米子を私の宝物として大切にしたいと思っています。
ありがとうございました。
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