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【作品名】㉖作法
村井 進吾(SHINGO MURAI)
大分県生まれ
1952-
【作品に関して】
河沿いの石
加茂川沿いの遊歩道にある白御影の石塊は、直角に交わる三つの面により、二つに分割され僅かに開かれた状態で配置されている。川面の水平性と片側のコンクリートの壁面の傾き、そしてレンガタイルに覆われた遊歩道の形状によりその方位を定めた。
「作法」とは、そのものの在るべき姿であり私自身の在り様である。何もなかった空間に物が置かれた戸惑いを、行き交う人々はどのように受けとめるのだろう。
【制作】2000米子彫刻シンポジウム
【会期】2000年7月22日~8月30日
【米子彫刻シンポジウムに参加して】
知り合いの作家たちから米子彫刻シンポジウムの話を聞かされたことが幾度かあった、皆懐かしそうな顔をして米子の良さを語っていた。
30年前、美大に入学したばかりの頃、友人と車で回った中国地方の旅の途中、通り過ぎただけの記憶以外には米子に特別な思いの無い私はぼんやりと彼等の話を聞いていた。雑事から解放され制作に埋没できる新しい土地での生活は、ただそれだけで十分に幸せな時間だが、恵まれた自然の環境と落ち着いた町並みは何か懐かしく、又シンポジウムに携わる皆さんのそれぞれの立場での熱い想いに後押しされ、心地よく仕事に集中することができた。制作現場と設置場所の距離も私にとっては理想的であり、頻繁に行き来し納得のいく確認作業ができた。この事は彫刻制作にとって最も重要な要素だと考えている。
米子彫刻シンポジウムの素晴らしさのひとつはこの事にある。世の中の変化に倣い美術の多様化も急速に進んだ、広がった選択肢の中から米子にふさわしい形を見出すことは容易なことではない。守るべきことと新しい変化の狭間での苦悩は作家も又同様である。私自身の作家としての成長と同じく米子彫刻シンポジウムの成長を願っている。
中海を渡る風。凪の暑さ。間近で見た花火。灯篭流し、おお鷺。猿顔の猫。美人を連れた名前のわからない柴犬。ボートを漕ぐ健康な若い人の汗まみれの顔。閉会式が終わり皆さんに見送られた後、湊山公園に引き返し連夜の深酒のせいで息を切らせながら登った米子城趾からの眺望と、頂き近くを低くゆったりと風に舞っていたトンビ。
他の誰より早く仕事を上がって、中海を渡る風にパタパタと揺れるブルーシートのテントの下に腰をおろし、石を眺めながら飲んだ一杯。たくさんの素敵な面々との出会い。米子から戻り知人たちからシンポジウムの事を聞かれる度に私も答えている、米子は良かった。2000年の夏を米子で過ごすことができたのは幸運でした。
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