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【作品名】㉝水のかたち-conversation
高濱 英俊(HIDETOSHI TAKAHAMA)
熊本県生まれ
1957-
【作品に関して】
米子の水はおいしいです。この作品は私たちの生活に不可欠な水をテーマにしています。
水には生命が宿っています。ダムや干拓事業等は真剣に考え直さなければならない問題だと思います。河川の死滅は人の体でいえば血液の潤滑な流れを止めてしまうようなものです。私たち人間は生態系の一部であり、自然と一体となるべき存在です。私は地球を一つの生命体と考えます。ですからすべての地球上の物質には生命があるといえます。
利益優先の社会は差別や争いや廃棄物を生み出し、自然破壊も日々進んでいます。少し考え方を変えて、自然に対してもっと愛情を持っていけば、環境も改善していけると思うのです。時を超えて私たちがやらねばならない事は、美しい自然環境という遺産を残していくことでしょう。
このようなコンセプトで制作している訳ですが、私は個人の感性を尊重したいのです。大切なのは作品を観賞される方々のイメージ力です。人によって感じ方が一人一人違うはずです。ですからこの作品の説明は付け合わせ程度に思って頂きたいというのが本音です。
【制作】2002米子彫刻シンポジウム
【会期】2002年7月13日~8月25日
【米子彫刻シンポジウムに参加して】
閉会式の日、なじみある人々の顔が沢山そこにありました。
それはあたかも昔から知っている人々のよう錯覚を抱くほどでした、40日間の長いようで短かったシンポジウムは終わりました。日常から離れてリフレッシュされた気分に浸り、少し名残惜しさをのこしつつ、様々な思いの集積である作品を無事設置できて、非常に満足しています。
作品を直接手掛けたのは私個人なのですが、知らず知らずのうちに、多くの人の意思が作品に反映したのは事実です。作品は人と人を結ぶ一つの媒体であり、単独では存在できません。人々の支えがあって成り立っています。背後には昼夜問わず手厚いもてなしをして下さった役所の方々や、ボランティアの方々のバックアップ体制が見え隠れしています。他の参加作家にも恵まれました。彼らは大変すばらしい仕事をしたと思います。もちろん私もなのですが、何よりも重要なのは片寄りのないバランスのとれた状態を維持するよう努力した事でしょう。緊張し過ぎても長続きないし、くだけ過ぎても仕事は進みません。この点をうまく消化していたように思います。
そして何よりも良かったのは制作中に大きな事故や怪我がなかったことでしょう。いささか夜のシンポジウムでのアルコール消毒が効き過ぎた日があったようですが、皆さん体調もほぼ万全で、制作に没頭しているようでした。幸運な事に宿泊先が朝日町というネオン街の近くで、当然のごとく毎夜出没し、徘徊し、おいしい酒や肴を満喫し、栄養補給をする日々が続きました。
もう一つの旅の醍醐味を味わったのは、作品もほぼ完成してきた頃で、あちらこちらの名所や温泉を堪能する事ができました。私は当初からこのシンポジウムを楽しもうという気持ちで来ていましたから、その目的は完璧に果たせたと思います。作品制作の面に関しても、気持ち良く作業が進められ、その隙間をぬうように沢山のイベントが待ち受けていて、それが又新鮮な刺激となりました。
私はこの旅によって多くのインスピレーションを受け、その蓄積によって新たな制作意欲を沸かせています。最後に私が米子に抱いた印象というものは、すばらしい自然と共存している町という感じであり、文化が浸透している町という印象です。閉会式の翌朝、私は居残って自分の作品の前で佇んでいました。そこへ散歩途中の人がやって来て、「米子の市民は文化だけは大切にするが攻撃性がないから」と言われました。私は答えました。「それで充分では」と。私は米子の方々には、これからも古い町並みや手つかずの自然、そして独自の文化を大切に残していってもらいたいと思います。それからもう一つ、米子で見かけた人々の優しい顔も忘れることができないでしょう。
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