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【作品名】㉑夢尻図
籔ノ内 弘(HIROSHI YABUNOUCHI)
京都府生まれ
1943-
【作品に関して】
街に設置される彫刻はそれのみで発言し、その美しさを市民に理解させようとするものもあれば、一方で親しく人と接して座ったり寝ころんだり抱きついたりキスしたり、彫刻と人が景色となる時、生命が吹き込まれ生き生きとしてくる、そんな作品を設置しようと思いました。
丸くて柔らかな可愛いエロティズムをふくんだフォルムの、お尻のような形がベッドの上に転がっている街中の夢空間を表現しました。
【制作】’98米子彫刻シンポジウム
【会期】1996年7月18日~8月30日
【’98米子彫刻シンポジウムを終えて】
米子彫刻シンポジウムに参加要請の手紙が来た時、「喜んで参加します」と返事を出しました。米子市美術館で開かれた行動展に作品出品の為、過去3回米子市を訪れたことがありましたが、その都度地元会員の友人達が美術館近くや皆生温泉、境港、足立美術館、朝日町等を案内して下さり、その親切さと温かさに触れ、再び訪れてみたい街の一つだったからです。
昨秋の現地下見の時、作家4人で話し合い、今回は共通のテーマを持とうということになりました。出会いふれあいを大切に、風景の中に溶け込んだ作品が人を拒絶するのではなく、人々と対話し、ふれあい、人々が作品に座ったり寝ころんだり抱きついたり、石のぬくもりを体感でき、人と作品とが一体化するような作品を設置しようと決めました。
今回制作の夢尻図(ユメシリーズ)は、30年来続けている、石でお尻を彫る仕事です。設置場所の加茂川という川は京都にもあり、風景、水質、流れは異なりますが、すごく身近に感じました。そんな光景のなかで、本来室内にあるべき処のベッドや枕と丸くてふくよかなすべすべとしたお尻が道端に置かれている。京都の自宅風景を米子に再現した情景彫刻です。
灼熱の太陽の下、45日間の制作を振り返ってみて、青春真っ只中の45日in米子"という気がします。毎日石を彫ることだけを考えて生活をする。世間の疎ましくややこしい問題に顔を突っ込むことなく、世俗から離れたような、只ひたすらノミを振り、石を磨き、完成だけを目指し、語り合い、意見交換をし、食べたり飲んだり笑ったり教えられたりした日々。
良き作家、スタッフ、アシスタント、実行委員、ボランティアの方々に恵まれたことはもとより、地元の方々の人情に触れ、こんなに楽しいシンポジウムは私にとって一生の宝となりました。
米子彫刻シンポジウムは前回から市の都市計画の一部として新たに官民一体の長期展望に立った基本計画であり、加茂川緑の公園遊歩道から海へと繋がる彫刻ロードを文化的事業として目指すと聞いております。しかしともすれば行政指導でお仕着せの彫刻設置になってくる場合があります。彫刻シンポジウムを開催して、作品だけを設置すれば文化の薫りがしてそれで良いのだという場合です。実行委員の方々と行政の方々がよく話し合い、一番大切な、市民に愛される場所、また、市民が誇れる環境をつくって下さることをお願いしたく思います。
私は、仲間達と京都アートカウンシルというグループをつくり、ヒト・マチ・アートを合い言葉に、"アートで明るい街づくり"をテーマに京都を守りより発展させようと思って行動しています。それは、みんなが京都を愛しているからです。
今、米子で出会った一人一人の顔が浮かんできます。
I love YONAGO 1998年秋
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