藪ノ内 弘 1943- 京都府生まれ
1998年制作
【市民から見た作品】
今回も「この作品、何にみえますか?」と皆さんにお伺いした。ただ、今回はストーリーズに使った写真が特徴的であったり、そもそも彫刻自体に大きな特徴があるため、多くの同じ意見を頂戴した。
これを読んでいる皆さんもあれではないか?とお考えではないだろうか?そう、「お尻」だ。表現は「お尻」が多く、その他「ももじり」や「ウサギのお尻」などのバリエーションがあった。これはネタバレになるが、この作品のタイトルには「尻」が入っており、皆さんの推理は正解であった。それにしてもここまでわかりやすい作品も少ない。是非この先の、この作品に込められた想いものぞいていって欲しい。
【移住者・CAから見た作品】
初めてこの作品を見た時のインパクトが強く、加えてタイトルも非常にトンチの効いた、記憶に残る名前だったため、今回はこの作品の簡単な概要やタイトルを知った状態で書かせていただく。
写真の角度によっては分かりづらいが、この彫刻にある丸いものは、近くで見ると明らかに尻の形をしている。そして横に並ぶ四角いものは何だろうと引いて見てみると、枕のように見えてくる。もしやと思いさらに引いてみると、これはベッドの上の世界である。ベッドの土台部分にも尻の形をした石があり、この不思議な世界観をより強いものとしている。
タイトルから考えるに、この異質な世界観は全て夢の中での出来事なんだろうか。そうすればこの作品の意味はなんとなく読めてくる。夜、ベットで寝ていると沢山の尻に囲まれている。その不思議な世界観に圧倒されながら、日常では考えられないアレコレを考える。そして夢から目が覚めると、あれ?夢だったか…となるのであろう。
夢と尻、何か今までありそうでなかった組み合わせであり、作者の遊び心が表れている作品だ。彫刻というと堅苦しいものだと思われがちだが、このような作品もあるんだよと伝えていくのが私の使命かもしれない。この使命をどうすれば全うできるか考えながらベットに入れば、気付けばいい夢が見れるかもしれない。(佐々木)
【作者の作品に関する想い】
街に設置される彫刻はそれのみで発言し、その美しさを市民に理解させようとするものもあれば、一方で親しく人と接して座ったり寝ころんだり抱きついたりキスしたり、彫刻と人が景色となる時、生命が吹き込まれ生き生きとしてくる、そんな作品を設置しようと思いました。丸くて柔らかな可愛いエロティズムをふくんだフォルムの、お尻のような形がベッドの上に転がっている街中の夢空間を表現しました。
【編集後記】
作者の想いには、作品全般に対する考え方も記されていた。ここまで21の作品に触れてきたが、確かに作品自体で全てが完結している、素人目からみれば優等生的な作品もあれば、市民が触れて、様々な角度で覗き込んで、あれこれ考えて、そこでやっと作品としての輝きを放つタイプもあると感じる。
この作品、私は決して後者ではなく、前者だと思っているが、どうやら作者は人がこの作品に関わった時に、彫刻に生命が吹き込まれ生き生きとすると考えているようだ。作品に抱きついてキスなど恐れ多くて(表現は合っているのか)できないが、そんなことをする人が彫刻ロードのHPを通して生まれると面白い。
移住者にとって米子の環境はまさに夢空間だが、作者のように「丸くて柔らかな可愛いエロティズムをふくんだフォルムの、お尻のような形がベッドの上に転がっている街中の夢空間」も想像してみると面白いし、米子がこの作品のようにではなくとも、何か彫刻と人との触れ合いがより盛んな場所となれば、より夢空間に近づくのでは無いだろうか。(佐々木)
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