西巻 一彦 1959- 神奈川県生まれ
2004年制作 【市民から見た作品】
特徴的などこか可愛らしいモチーフの彫刻。捉え方次第で大きく変化する多様な回答、そして市民の皆様の発想力に期待し、今回は「この彫刻は何に見えますか」と聞いてみた。
回答は想定通り幅広く、作品名通りの「ヤドカリ」に続き、「ソフトクリームの上」、「ウサギの耳」「チョココロネ」など沢山の回答をいただいた。
「ソフトクリームの上」や「チョココロネ」など、特に頭の渦巻いた部分に着目された方が多いように見える。上部の方が色が濃く、人の目線が行きやすいのかもしれない。また「ウサギの耳」という回答は、作品を全体的に捉えたのだろう。
見る人によって切り取る部分の違いが見え、面白みを感じた。
またどこか丸みを帯びたキャラクターのような印象の彫刻であることから、可愛らしい発想が多く感じた。
今回は写真をお見せして回答いただいたのだが、実際に彫刻が置かれてる中海周辺まで行くと近くに湖があることから、作品名の「ヤドカリ」へと導かれる回答が増えるのかもしれない。作品を見る状況、また着目する部分の違いで見られる印象の違いが見受けられ、実物の彫刻や周辺の空気感含め「作品」となり得ると感じた。(ヨネコ)
【移住者・CAから見た作品】
上記で書いた通り、この作品を全体的に捉えるのか、部分的に捉えるのかで受ける印象は大きく変わってくる。私(ヨネコ)はこの作品を全体的に捉えた。
まず私が想像した彫刻作品名が「双子」である。上部の二つの渦巻き部分が二つの顔のように見え、またそこから体の部分が重なっているように捉えた。「元来、双子は二つで一つ、一心同体の存在である」というメッセージを感じた。
また、渦巻き部分が頭であるように読み取り、一方はこちら側を向き、もう一方は向こう側を向いているように感じた。そこから、「生まれは同じでも、双子それぞれに意志があり、進む道(向いている方向)も異なっていることもある。しかしながら根本的な生命は繋がっている」というメッセージを読み取った。
また、この作品は上部の色が暗く、下部が色が明るくなっており、M字のラインを境に色が変化している。
私はこれより、上部の色の暗い部分が定められた宿命、下部から徐々に上がってきている(塗り替えている)ように見える明るい色の下部が未来と捉え、
宿命を歩みながら未来に進み、M字の盛り上がった2つのトップが双子のそれぞれの道として変化をし始め、宿命の繋がった部分から未来の双子のそれぞれの道に分かれて進んでいるというように想像した。
作者の思いや作品名を敢えて見ずに想像したことに過ぎないが、それでもまず初めに自分の中で作品の意図やメッセージ性を深く考えると大変面白く感じる。
友人と彫刻ロードを巡る際もこのようにあらゆる想像を膨らませながら巡ることも楽しいかもしれない。(ヨネコ)
【作者の作品に関する想い】
海をテーマとし、ヤドカリをモチーフにした作品です。海といっても日本の国土は四方を海に囲まれ、その土地土地によって、様々な特色があります。
今回参加させていただくにあたり、地図上からや、友人、先輩方に米子の環境、風土などを伺い、さらに実際足を運ぶことで作品の具体的なイメージをあたためていきました。中海のもつ穏やかさ、魚達が巣立っていくゆりかごのような、そんな海のイメージをもって今回の作品を制作しました。海に隣接し、作品と海が同時に見渡すことのできる設置場所でもあります。これは、私にとってとても喜ばしいことでした。
私の作品が灯台のようにこの場所で市民と共に生き続け、また見る方を和ませ、対話し、日々様々な物語を作ってくれればと思います。
【編集後記】
シンポジウムへの参加を終えての西巻さんの言葉には、支えてくださった方々への感謝の気持ちが多く語られている。
他の参加作家さんとの「出会い・ふれあい」に恵まれ、日中はボランティアの方々のやさしさに包まれ、また夜は朝日町の方々のやさしさに包まれ、日夜を問わずすばらしい環境だったとも書かれていた。
確かに作品を再度拝見すると、全体的に丸みを帯びた「やさしさ」を感じる。また作品に対する思いの中でも語られている「魚達が巣立っていくゆりかごのような海のイメージ」のようなどこか作品の内に籠った生命のエネルギーも感じる。
そのような「やさしさ」や「生命のエネルギー」は作品名をまだ知らない状態で市民の皆さまや私が最初に作品に抱いた印象とも一致するのではないだろうか。
西巻さんの作品には森羅万象、自然や暮らしの営みの中に明るく宿っているように感じる。(ヨネコ)
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