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執筆者の写真ネギタ

#35眼の時

永野 光一 1954-   北海道生まれ

2004年制作


【市民から見た作品】

彫刻に囲まれた街「米子」では、作品を見ただけでどこにあるものかピンとくる方も多いと思う。特に顕著であったのは駅前のカバの見た目が特徴的な作品だが、その他は一体どうなのだろうか。私のほんの好奇心で今回は「この作品、どこにあるでしょう?」と聞いてみた。

選択肢は「米子城跡頂上」「米子港」「湊山公園の入り口」「皆生海遊ビーチ」と、米子市民なら恐らく皆行ったことがあり、かつこの作品がありそうな場所にしてみた。私としては正答率30%でもいけばいい方だなと思っていたが、なんと58%で改めて米子の皆様の凄みを感じる結果となった。

ちなみに正解は「湊山公園の入り口」である。がいな祭りの花火を見に行く時など、目にしたことがある方も多いと思う。次に回答者が多かったのは「皆生海遊ビーチ前」で33%だったが、海遊ビーチ前にも彫刻作品があるので迷った方もいらっしゃっただろう。

改めて街に彫刻が点在していることは普通ではなく、特別なことであり、それが根付いていることを実感することができた。


【移住者・CAから見た作品】

彫刻には具体的な物もあれば、一目見ただけでは何か分からない作品もある。もちろんどちらがいい、どちらが悪いという話ではなく、どちらにも魅力があるのだが、ブログを書く身としてはやはり分かりやすい見た目の作品の方が書きやすい。もしかするとこの作品を見たときに、あれを表現しているのかなとピンときた方もいらっしゃるかもしれないが、私は人生経験が浅い故に中々ピンとはこなかった。今回はそんなそんな視点でブログを書いてみる。

まず作品を一目見たときに感じたのは、作者の心の中にある概念を形にした「何か」でないかと思った。「何か」と表現したのは、喜び・悲しみ・怒り・呆れなどの感情を具現化しようとすると、人によって全く異なった形になるのではという私の推測、それに加えて私の心の中にはこの作品のような形をした感情がないので、「何か」としか表現できなかったという事情もある。

この作品の中で一つ注目するのであれば、両サイドにある黒い石である。中心の白い石とは色が異なり、挟むように配置されている。私はこの石が元々一つだったのではと考えている。つまりこの黒石は心そのもので、そこを2つに割ったとき、中から真ん中にある「何か」が形を表したのである。そう考えると真ん中の石には作者の想いが詰まっていると考えるのが普通であり、強い力を感じる。

ここまでの内容はもちろん推測を多く含んだ内容で、いうなら妄想話である。いや、むしろここまでのブログは全て妄想話を詰め込んだ物であった。ブログ執筆者の佐々木にとって最後のブログであり、最後の妄想話である。最後にふさわしい難しい、でも面白い作品であった。(佐々木)


【作者の作品に関する想い】

私の作品は湊山公園の入りロ付近の歩道の横に設置されています。米子をはじめて訪れた2月下旬の下見の会の時に、予定された4ヶ所の設置場所について作家が話し合って各自の設置場所を決めました。私の設置場所の近くには背の高い古木があります。今回の米子彫刻シンポジウムの作品をどのようなものにするか。選んだ石と設置場所の空間などを考えながら北海道で案を練りました。私が作品を制作するときに頭からはなれないものに「網膜」「投影」「交差」「記憶の滴」「鼓動」「振幅」「光の帯」「能動的」「受動的」「変換」「埋没」「表出」「情景」「戯れ」「透明」「不安定な影」「曖昧」「挑発的」「匂い」などがあります。私達のまわりでは様々なことが起こっています。今回の作品は見つめるということをテーマに制作しています。3つの石を配置しています。中央の石は現実の目と心の目を表しています。両端の石は過去、未来を表しています。米子のまちにしっくりとなじんだ作品になっていくことを願っています。 


【編集後記】

石にはそれぞれ意味があった。中央は「現実の目」と「心の目」。両端は過去、未来を表していた。そして作者には作品制作を行う上でのキーワードが沢山あった。そのキーワードはプラスともマイナスとも言えない、絶妙なバランスを保ったものであったが、そのワードにも入っているように、どちらかと言うと「曖昧」なものが多く、私が表現した「何か」の正体はこのような状況がまとまった結果だと思う。

これらのまとめとして、作品のテーマは「見つめる」であり、もう一度見直してみると心の中を見透かす目に見えてきた。

彫刻作品とは不思議であるが、見るたびに見え方が変わり、知見があれば見え方が変わり、作者の想いを知れば見え方が変わるものである。人によって感じ方も様々で、私も35個のブログを書き、様々な学びがあった。それぞれの作品に特徴、魅力があり、楽しさがあった。最後の「編集後記」で締まらないが、結局は見る側が、心の目で多角的に見てみることが彫刻を楽しむコツだと感じた。(佐々木)


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