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執筆者の写真ネギタ

#34米伝説

平井 一嘉 1958-   埼玉県生まれ

2002年制作


【市民から見た作品】

今回も「この作品、何に見えますか?」と皆さまにお伺いした。参加してくださった皆様、ありがとうございました。

個人的にはラグビーをずっとしていたこともあり、ラグビーボールが連なっていると感じたが、同じように考えた方はいただろうか?

市民の方からは「蓮根‼︎」と意見もあった。確かに蓮根は小さいものが連なっているイメージがあるので、切ってみてもし穴が在ればこれはまさに蓮根だろう。

その他の意見として「ジャックと豆の木の豆」という意見があった。恥ずかしながらジャックと豆の木を読んだことがなく、どんな豆なんだろうかと調べてみると、「オーストラリアンビーンズ」、またの名を「ジャックと豆の木」と言うそうだ。大きな豆が2つに割れてそこから芽が出ると言うユニークな植物だそうだが、確かにその豆はこの作品に出てくる形と似ている。

この作品はラグビーボールなのか、蓮根なのか、豆なのか、はたまた全く別のものなのか?人が登場すると言う点にも着目しながら、この作品を追っていきたい。


【移住者・CAから見た作品】

米子駅周辺の彫刻からブログを描き始め、駅から遠ざかるようにして紹介を進めてきたこのシリーズも残り3つとなった。ここまでブログ作成を主に担当してきた佐々木にとっては、ブログを執筆するラスト2つの作品にあたる。

この作品は終わりになるにつれ増えてきた、人が登場する作品だ。#1のブログで私にとっての彫刻のイメージはダビデ像で、人が出るものだと書いた記憶があるが、この1年を通してその彫刻に対するイメージは変わり、むしろ人がでない作品の方が多いのだなと思っている。人がでない作品は、作品の細かな表現に目を向け、どんな作品か読み取るので、それが難しいなと感じている。では人が出る作品は簡単かと言うとそれはそれで違う。

人が出る作品はまずその者のおおまかな年齢や性別を考察し、そこから表情や目線、フォルムをみて、一体どんな場面で、どんな状況を切り取ったものなのかを考える。この作品で言えば少女が上を向いて遠く先を見つめており、これから始まる未来に対しての希望を表現しているのではと読み取った。ここまでくると、作品の土台や他に出てくるものを勘定するのだが、この作品では豆型の物が積み重なっているのが着目ポイントだろう。読み手の感性にも大きく左右されるが、私には少女のいる場所まで積み重なったと言うより、成長していったと感じたので、何かの植物かと思った。ではそれが何かと問われると、アイディアがなく難しいのだか、ここまでを通して、農業をしている少女が、今後も作物の豊穣を願っている作品かと考えた。

作者の想いを読むと、全く違う可能性ももちろんあるが、彫刻は見る物がいて初めて成立すると思うので、私の考えも作品の一つの見方、エッセンスとして理解していただけるとありがたい。(佐々木)


【作者の作品に関する想い】

今回米子で制作するにあたり、子供と米の構成で作ろうと思っていましたが、毎日食べているお米なのにあまり知らない。お米は炊けば食べられるし粉にして焼けばおせんべいなど加工食品として保存食にもなり発酵させればお酒にもなる万能食品ですが、それが育つ過程の最初のところは見たことがなかった。知り合いの農家とお米屋さんで籾といろんな種類の米を頂いて形の違いを調べたり、水に浸して観察してみると、眠りから覚めたかのような生命力に感動しました。弥生時代からの米作りとそれ以前からの人類の営みが永遠と続いてきた今。減反や少子化が進むなかで昔はどうだったとか、また何を未来に継続していったら善いとかちょっと足を止めて考える切っ掛けになってくれればと米伝説としました。


【編集後記】

「米子で制作するにあたり、子供と米の構成で作ろうと思っていました」という冒頭、移住して約1年になるが、米子という地名の由来について深く考えたことが無かったことに気づいた。正確な理由は分からず、4つほどの推測があるそうだが、その一つは「稲がよく実るから」というシンプルなものであった。目久美遺跡からは大規模な水田跡が見つかっており、名前の由来かどうかは置いておいて、米子と米はきってもきれない関係のようだ。

作者の想いを読んでいると、確かにお米の汎用性や生命力の強さを思い出した。地元の酒造は美味しく、米本来の旨味を活かすどぶろくも米子圏域で製作されている。夏には台風の後に水田を通ったが、どれも倒れながらも成長を続けていた。

その米と子供の組み合わせ。どのようなデザインにするか迷ったであろうが、米を積み重ねるというアイディア。今食べているお米が、弥生時代から続いているという事実を思い出させる、意表をつくデザインである。米子市民や観光客にとって、昔から続く米作りを未来へ繋げるきっかけにできるであろう作品である(佐々木)


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