大井 秀規 1960- 山口県生まれ
1998年制作
【市民から見た作品】
今回はいつもと趣向を変えて、「ズバリ!タイトルはなんだと思いますか?」と皆様にお伺いした。少しクイズのような要素も加え、皆さんのお考えを聞こうとしたのだが、私がヒントとして「英語」「りんご」と伝えたため、ちょっとした混乱が起きてしまった。というのも、この作品は「Gravitation」、日本語訳すると「重力」という作品だった。重力と言えばニュートンのりんごを連想してヒントを出した。
そんな中で一つ印象に残ったのが「アップルカットナウ」という回答である。私自身は形から連想を得てヒントを出していなかったが、確かに作品の形がりんごである。そしてその作品が真ん中を境に切れている。恐らくこの回答をした人は、これはりんごが主語で、りんごに何か手を加えた作品なんだろうと考えたに違いない。ただ英語というヒントもあるので、無理くり英語にしようとした結果が、「アップルカットナウ」だと思う。
とは言え、このような回答に出会えたことも良かった。私自身も形がりんごに見えていたわけではなく、そのような見方があるのかと気づきに繋がり、なおかつそこから切られているという状況に繋がった思考を垣間見ることができた。
この他は「DREAM」など、英単語の回答が多かった。ヒントもほどほどにしなければいけないと思ったが、今回も素晴らしい回答に出会えた。
【移住者・CAから見た作品】
いくつかの石で構成されたこの作品。特に目を引くのは草の手前にある2つの彫刻だろう。共によく見ないと気づかないが、完全な石ではなく、浮いているように見える。どういうトリックなのだろうか。近づいて見てみると、上と下それぞれがいくつか突き出てる部分があり、上と下のそれの頂点がちょうど綺麗に重なっており、それが浮いているような印象を抱かせる。
形は一つがりんご、一つは上が尖っているのでおにぎりのように見える。これらは素材の形をそのまま活かしているのだろうか?表面に大きく削った後はなく、形を活かしているのかもしれないが、そうすると一つ疑問になるのはなぜ間を切って、作品を浮いているように見せたのかということだ。この辺り、恐らく作者の想いを読めば何となく分かると思うが、大変興味深い。もしかすると、作品に使った石を軽く見せたかったのではないだろうか。果たしてあっているのか。(佐々木)
【作者の作品に関する想い】
石の持つ「重み」を一瞬感じさせないことをねらった作品です。二つの石を対に置くことで様々なイメージがわきでてくればと願ってます。
【編集後記】
なんともシンプルな作者の想いでしょうか。タイトルの「Gravitation」にも現れていますが、この作品は本当に浮いて見える。石を軽く見せるというよりも、「重み」を感じさせないことを狙ったということで、まさにそれが体現された作品だと思う。
そして石を対に置くことで様々なイメージがわけばということだが、私はまさに様々なイメージをした一人である。この作者の想いを読むと、やはり彫刻とは作者の想いだけで完成するものではなく、見る手の解釈もあってのものかと思う。大井さん、私のイメージはどうであっただろうか。(佐々木)
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