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執筆者の写真ネギタ

#23 地殻-COCOON.ⅠⅠⅠ

岡本 敦生 1951-   広島県生まれ

1998年制作 


【市民から見た作品】

今回は「何かに似ているな〜と思いませんか?」と、皆様が何に見えたのかを伺ってみた。

私が一つ共感したのは「くし」という回答である。ストーリーズに私が書いた考え、「洗面台でよく使うアレ」とはまさしく「くし」のことである。この作品は角度によって様々だが、線が等間隔に引かれている様子は、まさしくそれに見えた。

もう一ついただいた回答は「ピアノ」であった。恐らく「くし」と同じ側面を見ての回答だと思うが、確かに鍵盤が異様に細くて長いピアノだ。実物の「くし」と「ピアノ」は全く似ていないが、彫刻を通すとこのような回答が一緒に出るのは興味深い。作者の表現力の賜物だろう。


【移住者・CAから見た作品】

特徴はあるが、それを文字に表現するのが難しい作品が稀にあるが、それがこれではないだろうか。これは決して作品が面白くないなどというわけではなく、むしろ逆で感じるものが多いが故の難しさである。

角度によって見え方が全く異なるが、尖った三角錐のようなものがついた角度からはこの彫刻に吸い込まれてしまいそうな感覚を覚える。三角錐の頂点が潰れており、穴のようなものがあるからだろうか。とにかく怖さすら覚える。

そして側面に移動してみると、ギザギザとした面が出てくる。全ての面がそうではないことを考えると何か意図があるのだろうか。ギザギザ…。皆さんも是非考えてみてください。(佐々木)


【作者の作品に関する想い】

最近いつも海のことを考えている。無数の命と生の記憶とを孕んだ、潮汐のゆったりとしたうねりの中に、精神は限りなく吸い込まれて行って、地球という星の温かい羊水の中で目覚めることを思い続けている。このところ私が作ろうとしている石の形にも海への憧れが色濃く現れていて、命を孕む殻のような形、地殻に蓄積されたエロスを引き出したいと思い続けている。それは 私自身のコクーンでもある。 


【編集後記】

米子という海が綺麗で、昔からビーチとして栄えた街に、海への憧れを持った作者が訪れると、ここまで作者自身の想いが形に現れた作品になるのかと、どこか関心した。

作者にとってこの形は、命を孕む殻のような形や、地殻に蓄積されたエロスを表したものなのだろう。正直それをしっかりと感じ取ることができたかと問われれば、人によって違うと思うし、100%感じ取るのは難しいと思う。ただ作者の想いを知って見てみると、なんとなくそれが具現化されたものなのだろうときっかけは掴める。

私はこの作品の感想を述べる際の最初に、「特徴はあるが、それを文字に表現するのが難しい作品が稀にあるが、それがこれではないだろうか。」と表現した。きっとこのように感じたのは、私自身の人生経験の浅さ故であろう。作者が47歳の時に作った作品、その位の年齢になれば作者の言っている事をもっと理解でき、作品から滲み出る想いを感じ取れるのだろう。

上記は私の全くの仮定であり、実際にどうなのかは分からない。私もまた20年後位にこの作品を見に来ることができればと思っている。

(佐々木)


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