菱田 波 1965- 東京都生まれ
2002年制作
【市民から見た作品】
今回も「この作品、何に見えますか?」と皆さんにお伺いしてみました。4つに分かれているというのが一つのポイントだと思うが、その特徴を活かした回答があった。
複数きた回答としては「四葉のクローバー」というものだ。作品の中央部は磨かれており、幸運の記し、四葉のクローバーに見えてきた。
幸運から少し離れてしまうが、十字架という意見もあった。中々ダークな意見であるが、十字の線を最大限活かした回答である。
そして最後は「ルービックキューブ一部」という回答である。2×2の4ブロックのルービックキューブがあるのかなと思い調べてみると、実際にあるようだ。どうやらその面の少なさから初心者にも優しいらしい。確かにこの作品には隙間があるので、回転しやすそうだと思った。
【移住者・CAから見た作品】
この作品を見た私の感想は、なんとも気持ちのいいものだなというものだ。無造作に置かれたように見える石は綺麗な四角形に配置されており、それぞれの石に注目してみると、4つ合わせて八角形を作っているかのように磨かれた部分があり、石本来の強さと、人の手が大きく加わることによるしなやかさを感じることができる。構成されるための形に何一つ無駄がないように見え、それが気持ちよさに繋がっていたのだろう。
この作品の珍しい点として、作品自体の高さが低い上に強調させるような土台がない。彫刻ロードの作品は基本的に2パターンで、土台があるものと、土台がない代わりに作品自体が大きいものだ。地面から作品は始まっているので、作品としての認知が難しく、ベンチなり、湊山公園の一部と思われてもおかしくない。
立地としては湊山公園にある、猿を見ることができる「猿ヶ島」の目の前にある。場所自体は意図したものではないと思うが、少し賑やかな場所である。私が作品を見に行った日にも、「猿ヶ島」の近くに小学生が多くいた。小学生時代を思い出すと、さすがに彫刻を見て、そこから何かを感じることは難しいと思うが、またいつか「猿ヶ島」へ来ることがあれば、次はこの作品を見て、その珍しさなどに感心していると嬉しい。(佐々木)
【作者の作品に関する想い】
石は、私たちの住む地球が誕生した頃から存在しています。多種多様な石の中から自分の好きな石と出会い作品のイメージを生み出します。石はそのもの自身がたくましい力を持ち力強く輝いています。その存在感を生かしたものを作りたいと考えます。私が少し手を加えることにより石に新しい息吹がふきこまれ力強い作品となっていくのです。私の作品は石を割った面と、切った面とで成り立っています。石を割るときは、はじめにデッサンしたように計画通りには割れてはくれません。石自身が割れたい方向に割れるのです。そこから偶然できた形が最も美しくその石らしい自然の形になっています。切った面を磨くことにより割った面の美しさがよりきわだつようにしました。抽象的な形ですが、私は「語らい」という題をつけ、石と石とが少し空間を保ちながら4つの石が会話をしているように並べました。見に来てくれる方が、この作品の所で楽しく語り合うことができればうれしく思います
【編集後記】
作者の想いに触れ、私がこの作品に対して感じた気持ちのよさは、石自身が割れたい方向に割れているからではないかと思った。もちろん作品である以上、人の手は加わっているのだが、必要以上にそれを感じないのがこの作品の特徴かと思う。作者自身、石の持つポテンシャルを最大限に認めており、作品を作る事を「少し手を加える」と表現しているところは、個人的には素敵だと思った。
タイトルは「語らい」で、石と石に空間があるのは4つの石が会話をしているように見せるためだった。その想いを知って見てみると、確かに4つそれぞれが向き合って会話しているようにも見える。「猿ヶ島」の前にある作品ゆえ、楽しく面白い会話がここで行われる事を願う。(佐々木)
Comments