須藤 博志 1948-2015 高知県生まれ
1990年制作
【市民から見た作品】
今回は新たな試みとして、いつも通りの「この作品、何に見えますか?」に加えて、作品に関するクイズも行ってみた。問題は作品のタイトルに入る季節を問うもの。ヒントもない中で難しいかと思ったが、正解である「夏」の正答率は約40%であった。もちろん夏を選んだから凄い、間違ったものを選んだからダメという訳ではないが、やはり作品に作者の想いが漏れ出していると思った。はたまた米子市民は小さい頃から彫刻が身近であるから、分かった可能性もありますが。。初めての試みでしたが、約100名の方にご協力いただきました。ありがとうございました。
いつも通りの「この作品、何に見えますか?」ですが、色々な回答をいただくことができた。「太陽」「夕陽」「豆」など形から連想されるものや、作品に通る線から「川」という回答もあった。面白いと思ったのはを「雪の結晶」という回答だ。夏がタイトルに入った作品で一件真逆の様に感じるが、言われてみればそう見えるし、何より彫刻の可能性を感じる回答だと思った。
【移住者・CAから見た作品】
個人的にはどこか既視感のある作品だと感じた。何かを模して作ったものではないと思うが、綺麗な丸、そしてそこへ通る3本の線が、今までありそうでなかったデザインだと思わせた。
誰かのスーツの左上に、社章として付いていても違和感がないくらい綺麗で纏まっている。そう考えてみると、今まで扱ってきた彫刻の中では少し異質な存在なのかもしれない。今まで扱ってきた作品の多くは、ゴツゴツしたり、尖っていたりと、見た目から多くのアピールをしてきた。一方この作品は「そんなアピールをするよ」と言う暑苦しさの様なものを感じない。
ここまで書いてみて、また背景の自然も相まって、人工物ではなく元からここにあったものに見えてきた。
米子で彫刻を作る際にインパクトを残すには、「米子にこれが?」「米子にはやっぱりこれ」の2種類あると思う。そう言った意味で初めに書いた既視感とは後者に当たると思うし、米子だからここまで似合ったのかもしれない。(佐々木)
【作者の作品に関する想い】
暑い夏の日、少年は緑の葉を揺らして来た風にふと遊ぶ手を止め、青く輝いた深い空とゆっくりと流れる白い雲を眺めていた。 額の汗が、また一つキラッと光って落ちた。赤い円形の石は、太陽と夏、その赤石が風を横切り、少年の夏の思い出を形づくった……。
【編集後記】
情景を想像できる想いであった。あながち米子に元からあったと言うのも嘘ではないのかなと言うくらい、この彫刻と少年が共存している絵が浮かぶし、きっとこの彫刻が完成してからはこの様な場面が何度もあったに違いない。タイトルに「夏」と入っていたが、この説明を聞いてその理由が分かった。
90年の彫刻シンポジウムは7月末から8月いっぱい開催された。猛暑の中、目の前に広がった状況をよく表した作品だと思った。(佐々木)
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