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執筆者の写真ネギタ

#9風景



寺田 栄 1949-  福岡県生まれ

1992年制作


【市民から見た作品】

毎度お馴染みとなりつつある「この作品、何に見えますか?」と聞いてみた。まず1番多かったのはキノコ類に見えるという回答である。「松茸」「椎茸」「エリンギ」とキノコという括りの中で様々な意見が出た。普段どんなキノコを食べているかによって見え方も変わるんだと勉強になった。「松茸」が食べたい。

この他にバイキンマンの角という意見もあった。バイキンマンなんて最近見てなかったなと思い調べてみると、まっっったく同じ形でだった。上の部分が円ではなく、少しつぶれた楕円である所まで一緒である。

ほっこり枠では「寄り添う夫婦」という意見もあった。キノコ、バイキンマンとは全く角度の違う見方で、形一辺倒な判断を私もしていたので、なるほどなぁと思った。この作品を違う角度から見るとより寄り添っているように見える。様々な角度で見ると発見も多くなると感じた。


【移住者・CAから見た作品】

材質に面白みのある作品だと感じた。土台から作品上部まではザラザラした感じがあり、一方で上はツルツルとした様子を見せる。同じ石でもこれほどまで違った顔を覗かせるのかと驚いた。

作品を語る上では形ももちろん大事だが、

市民の皆様もあげたようにきのこの様な形に見えた。個人的に「しめじ」が少し苦手なのだが、不思議とそのように見える。しめじは1本だけの独立軍ではなく、何本もまとまっているイメージがある。この作品も同様に2本で1つの作品となっている。人は1人では生きていけない。この作品では今まで一度も考えたことはなかったが、きのこの世界ではどうなんだろうと斜め上の疑問を抱いた。松茸は1本単独で生えてくるイメージがある。しめじは固まりで生えてくるイメージがある。

彫刻には不思議な発想に近づけてくれる魅力がある。(佐々木)


【作者の作品に関する想い】

まちなかの景観のなかに、石で作られたかたちを置いてみる。そのかたちはみる人々に様々な思いを与え、遠い記憶の中から懐かしく、そしてどこか見覚えのある姿を呼び起こしてくれるだろう。 それは、空に浮かぶ雲、青く葉の繁れる樹々、心落ち着ける森や林、それになんだかおいしそうなかたち。 そんな人と、かたちを睦まじく結び合わせ、やさしく包みこむ空間が、新たな風景としてそこに現れるだろう。


【編集後記】

彫刻が何か新たな考えを呼び起こすのではなく、「かたち」がみる人々に様々な思いを与え、遠い記憶の中から懐かしく、そしてどこか見覚えのある姿を呼び起こす。

非常に深い考えで、これからも「かたち」に注目して彫刻を見るきっかけになるだろう。

「移住者・CAから見た作品」でしめじの話を出した身とすれば、おいしそうなかたちも候補に入っていて安心した。彫刻にならなければただの石であったものが、「かたち」を持つことで風景となるのが大変興味深かった。

(佐々木)



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